慰めの意味

Jan 5-11, @Toronto。 誕生日は郊外のGreektownとBrickworks Parkという古いレンガ工場跡ですごしました。Greektownは谷あいの街道を中心にした小さな町で、ギリシア人だけでなくメキシコ人、アジア系等多様な人種が集まったところなのですが、市の中心にあ…

Passage to Budh Gaya

22h、ヴァラナシ駅7番線プラットフォーム。 30分くらい前から、インド特有の停電なのか電気がつかず、ごくたまに数秒だけ灯りがつく以外はほとんど完全な暗闇である。21h発の電車はまだ姿を現さない。結局1h30の遅れは、ほぼ予想通り。 一番安い寝台車のた…

ヴァラナシ白昼夢

前回日記に書いたように、ヴァラナシという町にいます。 ここはガンジス川沿いの聖地ですが、同様に多くの人が訪れる観光地でもあります。ガンジス川沿いには数十を数えるガート(水位に関わらず沐浴ができるよう、階段状になった堤のことです)が並び、その…

タージマハルをつまみあげてはいけない(ピサの斜塔を支えてもいけない)

前回日記について、「また春樹にかぶれた妄想で貴重なウェブ資源を…」というご意見をいただきましたが、あれは紛れもない事実です。もしあなたが、あの日のラージスタン州州立テレビ・夕方のニュースを見ていたら、僕ら二人の姿を見つけたでしょう。見ていた…

8月の夕方に19歳のフランス人の女の子と手回し式の観覧車に乗ることについて

8月のある夕方、湖に面したインドの地方都市のお祭りで、ぼくは19歳のフランス人の女の子と手回し式の観覧車に乗る。ぼくたちはなにもいわない。観覧車は今まさに頂上に来ようとしている。 ぼくたちはデリーからジャイプールという地方都市への特急列車で知…

20080729

こんにちわ。僕はlisbon22といいます。 慣れない並びのキーボードに苦労しつつ、錆付いた窓ガラスを開けるようにようやくブログのパスワードを思い出しました。ご無沙汰しています。 友人のブログにも書かれていたのですが、僕は今インドにいます。 26歳、…

20040826

初任給が出たのでカルディコーヒーでバジルペーストとコーヒーフレーバー、そしてサンベネデットの炭酸水を購入。サンベネデットというのはイタリアで(多分)一番メジャーな飲料メーカーで、二年前の欧州チャリ放浪では本当にお世話になった。 馬鹿みたいに…

トニー・ガトリフ『愛より強い旅』

気がついたら、この間始まったと思っていたガトリフの新作の公開が今日までらしい。友人に誘われて、ついでに別の友達も巻き込んで、ワインを立ち飲みしてから見に行った。 正直に言うと、今ひとつといったところ。相変わらず映像は鮮明だし、何よりラマ音楽…

20060223

Ev、ガヤトリ・スピヴァク『文化としての他者』適当に流し読み、その後レポートのためにMahasweta Devi, _The Imaginary Maps_再々々読。SpivakがDeviを評価するあり方は、一言で言えば彼女が「関係の失敗」を描いているから、ということにあるだろう。その…

★ウラジミール・ナボコフ『ロリータ』4

絶望の中、ハンバートはロリータに自分の財産をすべて与えると、彼女のもとを去る。そうしてしまうと彼にはロリータを連れ出した男への復讐しかすることが残されていなかった。結局彼はその男を殺し、それによって投獄されることとなる。だが、そんなことは…

★ウラジミール・ナボコフ『ロリータ』3

ある日、ハンバートがふと目を離している間にロリータが姿を消してしまったことがあった。ずっと恐れていた彼女の逃亡がついに実現したことを確信するハンバートだったが、奇妙なことにロリータは再び彼の前に姿を現した。 後年私は、彼女がなぜあの日永久に…

★ウラジミール・ナボコフ『ロリータ』2

正確には、ハンバート(とロリータ)の第一の旅はここから始まる。彼らは一年間に亘って広くアメリカ各地を放浪し、安モーテルに泊まり、その度に愛し合う。ハンバートはロリータをわがままでなかなか言うことを聞かない存在だとみなすが、巧みな語り口によ…

★ウラジミール・ナボコフ『ロリータ』1

ヘレンは帰ってきた。玄関の段の前に立ち、頭を垂れ、嵐から逃れるために。出て行った道をたどって戻ったのではなかった。あれだけのものを見た後で、どうしてそんなことができるだろう? 「ごめんなさい」と彼女は言った。「心をなくしちゃったの」 (リチ…

宮地尚子『トラウマの医療人類学』2

だが帰国後宮地は、友人のカナダ人医師からフィールド・ワークで出会ったソマリア人少女を養女にしたという話を聞くこととなる。『ウェルカム・トゥ・サラエボ』という映画化された本にも似たような話があったことを思い出した宮地は、子供たちを「救い出し…

宮地尚子『トラウマの医療人類学』1

二年前の夏、東南アジアでバックパック旅をしたことがある。二ヶ月弱の間、最初は三人、それから二人、最後には一人になって*1、タイ・カンボジア・ベトナムを遺跡中心にふらふらと回っていた。 旅に出る前から決めていたことがあった。物乞いをしてくる人に…

アントニオ・タブッキ『レクイエム』1

ペソアつながりということで、イタリアの小説家アントニオ・タブッキについて。 そもそも小説家として一家をなすまでは、二十世紀最大の詩人の一人と呼ばれるフェルナンド・ペソア(ポルトガル人)を翻訳・研究しイタリアに紹介したことで知られていたタブッ…

ヴィム・ヴェンダース「リスボン物語」2

記憶を映像メタファで語ることは、もはや一種のクリシェになった。ビデオカメラを持って歩き回った記憶は、残っている映像そのものに取って代わられる。だが、無論残っている映像は僕が見たものではない。そして、それを見返すたびに僕たちは、その映像が常…

ヴィム・ヴェンダース「リスボン物語」1

「明るい太陽の下では、音でさえも輝いている」(ペソア) 「白は深い沈黙を象徴するのでなかった。過剰な絶句そのものだった」(大久秀憲*1) ヴィム・ヴェンダース監督「リスボン物語」の時間は、ヴェンダース作品特有のじりじりするような流れ方で過ぎて…