2005-11-01から1ヶ月間の記事一覧

★ウラジミール・ナボコフ『ロリータ』4

絶望の中、ハンバートはロリータに自分の財産をすべて与えると、彼女のもとを去る。そうしてしまうと彼にはロリータを連れ出した男への復讐しかすることが残されていなかった。結局彼はその男を殺し、それによって投獄されることとなる。だが、そんなことは…

★ウラジミール・ナボコフ『ロリータ』3

ある日、ハンバートがふと目を離している間にロリータが姿を消してしまったことがあった。ずっと恐れていた彼女の逃亡がついに実現したことを確信するハンバートだったが、奇妙なことにロリータは再び彼の前に姿を現した。 後年私は、彼女がなぜあの日永久に…

★ウラジミール・ナボコフ『ロリータ』2

正確には、ハンバート(とロリータ)の第一の旅はここから始まる。彼らは一年間に亘って広くアメリカ各地を放浪し、安モーテルに泊まり、その度に愛し合う。ハンバートはロリータをわがままでなかなか言うことを聞かない存在だとみなすが、巧みな語り口によ…

★ウラジミール・ナボコフ『ロリータ』1

ヘレンは帰ってきた。玄関の段の前に立ち、頭を垂れ、嵐から逃れるために。出て行った道をたどって戻ったのではなかった。あれだけのものを見た後で、どうしてそんなことができるだろう? 「ごめんなさい」と彼女は言った。「心をなくしちゃったの」 (リチ…

とりえんなーれにいったこと。

じゅういちがつ じゅうはちにち (きんようび) このあいだのにちようびは、よこはまのとりえんなーれにいきました。 はいったら、おおきなぱいぷのはしがあった。うわあ、おおきいなあ、とおもってみていると、おにいさんやおねえさんが、てにもったぼうで…

★Walter Benn Michaels, _The Shape of the Signifier_2

フランスの暴動、あるいは9.11以降の一連のテロリズムを(もしこれらが平行して考えられると仮定して、だが)単にアイデンティティの承認をめぐる争いと見做すことは、現在の自由資本主義(「帝国」)のあり方そのものに対する彼らの疑い(というよりはもう…

★Walter Benn Michaels, _The Shape of the Signifier_1

フランスの暴動は、徐々に収まってきているみたい。警察による暴力に端を発したことからロス暴動を思い浮かべる向きも多かったようだけれども、当時との時代的な風潮の違いは強く、内相の「社会のゴミ」発言が過半数以上の支持を得るといったわけのわからな…

宮地尚子『トラウマの医療人類学』2

だが帰国後宮地は、友人のカナダ人医師からフィールド・ワークで出会ったソマリア人少女を養女にしたという話を聞くこととなる。『ウェルカム・トゥ・サラエボ』という映画化された本にも似たような話があったことを思い出した宮地は、子供たちを「救い出し…

宮地尚子『トラウマの医療人類学』1

二年前の夏、東南アジアでバックパック旅をしたことがある。二ヶ月弱の間、最初は三人、それから二人、最後には一人になって*1、タイ・カンボジア・ベトナムを遺跡中心にふらふらと回っていた。 旅に出る前から決めていたことがあった。物乞いをしてくる人に…

ウィリアム・サローヤン『パパ・ユーア・クレイジー』

昨日の日記を書いてから食べ物が美味しそうだった小説って何があるかな、とぼうっと考えていたのだけれど、最初に思いついたのは(このブログのコンセプトである)旅の小説ではなくてなぜかウィリアム・サローヤンの『パパ・ユーア・クレイジー』*1だった。…

アントニオ・タブッキ『レクイエム』2

昨日の日記でも取り上げたのですが、タブッキについてもう少しだけ。 「よそもの」として街をさまようことは、言葉だけでなくあらゆるものを異化(普段慣れ親しんだ感覚とはちょっと違う違和感のようなものを味わうこと)することになります。ヴェンダースに…

アントニオ・タブッキ『レクイエム』1

ペソアつながりということで、イタリアの小説家アントニオ・タブッキについて。 そもそも小説家として一家をなすまでは、二十世紀最大の詩人の一人と呼ばれるフェルナンド・ペソア(ポルトガル人)を翻訳・研究しイタリアに紹介したことで知られていたタブッ…