批評

2006050402

研究会。何だか文学プロパーの人ばかり集まってしまい、社会学ディシプリンの友人(先輩)に申し訳ない。僕ももともと社会学プロパーのはずだったのだが(今でも一応ずっと文学やってた人よりはそちらに近いと自認しています)。それでも文学と社会学なんて…

池内恵『現代アラブの社会思想』

新書(出版は2002年)。買いそびれていたのだが、下北で友人に連れられていったちょい悪宮沢賢治の店で購入。 アラブの社会思想の社会史的展望(イスラーム思想の目的論性や経済との関連など)を論じる前半は、よくまとめてあるな、という印象だったが、終末…

ジャック・デリダ『友愛のポリティックス』

Jacques Derrida, _Politiques de l'amite_, 1994の全訳(鵜飼・大西・松葉共訳)。一週間で上巻を読み、二ヶ月おいて二日で下巻を読み終わる。 「おおわが友たちよ、一人も友がいない」というアリストテレスの言葉を入り口に、ギリシア的フィリア(愛)→キ…

ジャック・デリダ『言葉にのって』

フランスのラジオ番組「肉声で」の一環として行われたデリダの対談を基本的にそのまま文字に起こしたもの。っていうかそもそもこんなラジオ番組があること自体驚き。歓待、現象学、政治における虚言、マルクス主義、正義と赦しという(後期)デリダの主要テ…

越智博美『カポーティ』

最後の文学セレブ(?)、トルーマン・カポーティがいかにゲイでマザコンでナルシストであったかについての本(というのは半分くらい嘘です)。トルーマンの伝記的事実を追いつつ、書かれた本の(彼のホモセクシュアリティにやや重点を置きつつの)紹介、と…

20060403

今日は友人と研究会。それぞれ自分の専門に関わる本(で自分以外の誰かが喜びそうなもの)についてレジュメを切ってきて発表しあいました。以下簡単に紹介。 ・Susan Faludi, _Backlash: The Undeclared War Against American Women_ 社会学をやってる友人の…

James R.Kincaid, _Erotic Innocence: The Culture of Child Molesting_

我々の身の回りには、小児性愛にまつわる言説が満ち溢れている。児童性虐待批判などに限らず、映画「ホーム・アローン」におけるカルキン少年の愛らしい姿でさえ、その例外ではない。だが、我々はそうした言説にあまりに浸っているがゆえにその物語が「正し…

ミシェル・オンフレ『〈反〉哲学教科書』

哲学教科書" title="哲学教科書" class="asin">大学院生にもなってこんな本をこっそりと読んでいる辺りが僕の哲学コンプレックスの現れな気もするのですが(哲学をやっている人と音楽をやっている人に対して強いコンプレックスを持っているのです)、ともあ…

齋藤純一『自由』

一日一冊電車内で読破しようキャンペーン第二弾。年明け頃の朝日の書評に載ってて気になってたのだけどやっと読んだ。えー、率直な感想を二つ。①途中の小泉批判がすげー気持ちいい。②就職活動中に読むもんじゃない。冒頭で自由概念の歴史的変遷をその仮想敵…

ダンカン・ワッツ『スモールワールド・ネットワーク―世界を知るための進化学的思考法』

なんだか電車に乗って長い時間移動する日だったので、昔読んでたこんな本を読み返してみました。去年とおととしちょっとだけ流行った、「世界中のどんな人でも六人の知り合いのネットワークで結ばれうる」というテーゼ(この語のもとはアイヒマン実験で有名…

スラヴォイ・ジジェク『斜めから見る―大衆文化を通してラカン理論へ』

ちょっとした事情があって、ラカンがどんなこと言ってるのか気になって再読。いやーこの人のラカンの説明はわかりやすい。どうして精神分析(とりわけ後期ラカン)ってそれについて書いてる本はこんなに読みやすいのにそのものはアレなんでしょうか(日本語…

暮沢剛巳『美術館はどこへ?―ミュージアムの過去・現在・未来』

ちょっと前の話だけれど、ナム・ジュン・パイクが亡くなった。何となくそれから考えていたことが、暮沢剛巳『美術館はどこへ?』を読んでるうちに形になった*1。 この本は基本的に、ルーブル以降のいわゆる「近代ミュージアム」のあり方を(その前身となった…

村山敏勝『(見えない)欲望へ向けて』、安野モノコら『JAPON:Japan×France Manga Collection』1

しかし、そもそもものを読むとは、他人になること、同一になれるはずもないものに同一化することだ。そして…同一化と欲望とは区別がつかない以上、読むことは原理的に性的かつ無作法なものでしかありえない。 要するにわたしは、たとえ自分勝手な愛しかたで…

★Walter Benn Michaels, _The Shape of the Signifier_2

フランスの暴動、あるいは9.11以降の一連のテロリズムを(もしこれらが平行して考えられると仮定して、だが)単にアイデンティティの承認をめぐる争いと見做すことは、現在の自由資本主義(「帝国」)のあり方そのものに対する彼らの疑い(というよりはもう…

★Walter Benn Michaels, _The Shape of the Signifier_1

フランスの暴動は、徐々に収まってきているみたい。警察による暴力に端を発したことからロス暴動を思い浮かべる向きも多かったようだけれども、当時との時代的な風潮の違いは強く、内相の「社会のゴミ」発言が過半数以上の支持を得るといったわけのわからな…

宮地尚子『トラウマの医療人類学』2

だが帰国後宮地は、友人のカナダ人医師からフィールド・ワークで出会ったソマリア人少女を養女にしたという話を聞くこととなる。『ウェルカム・トゥ・サラエボ』という映画化された本にも似たような話があったことを思い出した宮地は、子供たちを「救い出し…

宮地尚子『トラウマの医療人類学』1

二年前の夏、東南アジアでバックパック旅をしたことがある。二ヶ月弱の間、最初は三人、それから二人、最後には一人になって*1、タイ・カンボジア・ベトナムを遺跡中心にふらふらと回っていた。 旅に出る前から決めていたことがあった。物乞いをしてくる人に…