ジャック・デリダ『友愛のポリティックス』

友愛のポリティックス I
Jacques Derrida, _Politiques de l'amite_, 1994の全訳(鵜飼・大西・松葉共訳)。一週間で上巻を読み、二ヶ月おいて二日で下巻を読み終わる。
「おおわが友たちよ、一人も友がいない」というアリストテレスの言葉を入り口に、ギリシア的フィリア(愛)→キリスト教的隣人愛→近代市民思想の根底に深く横たわる「友愛」が兄弟愛に他ならならず、「人間の歴史」は常にそれを必要としつつ発展したことを批判的に指摘する。文法等の次元を入り口にこうした兄弟愛の男性ロゴス中心主義及び友敵関係そのものを(主にシュミットの友敵論に寄り添いつつ)脱構築する身振りはデリダにおなじみのものだが、後期デリダ的なethicsの次元及び明確な政治性も比較的顕在的なのは興味深い。スピヴァクが『学問の死』において使っていた「テレイオポイエーシス」の概念は、かなり違う意味で使われているようだが、デリダの用法の理解を深めることでスピヴァクが表立っては(自明のこととして)言わなかった含意が見えてくる気がした。
ただ、なんにせよ哲学の(とりわけ古代)素養が全く無いため、正直二割くらいしか理解できた気がしない。勉強不足の感は否めず。