スラヴォイ・ジジェク『斜めから見る―大衆文化を通してラカン理論へ』

斜めから見る―大衆文化を通してラカン理論へ
ちょっとした事情があって、ラカンがどんなこと言ってるのか気になって再読。いやーこの人のラカンの説明はわかりやすい。どうして精神分析(とりわけ後期ラカン)ってそれについて書いてる本はこんなに読みやすいのにそのものはアレなんでしょうか(日本語になってない)。ヒッチコックの映画文法を中心に大衆文化をラカン的な読み方で読む、というまさにタイトル通りの本。なんだか理論的な説明のところは刺激的なのにだいたい落ちが尻すぼみなことが多くってややがっかりすることが多いですが、精神分析の入門にはうってつけでしょう。
いや、これを読むといまさらながら精神分析って言うのは徹底的な読み方のテクノロジーだとしみじみと実感します。ただ、ジジェクは「何でラカンか」という問いはあまり発さずに「今ラカンがどれだけ(まだ)使えるか」という立場で書いているような感じがするんですが、これってどうなんだろうと少し思いました。最後の章のハーバーマスやローティへの批判もわりあいいい加減な感じだし。この人は自分が思っているよりはローティに近いような印象を受けるのですが、いかんせんワインを飲みながら読み流したのでよくわかりません。