20060629


「Waseda Bungaku」1号〜4号読破。豪華執筆陣のライトな読み物が殆どで、肩の力を抜いて読めるのはいい。けどもうちょっとオリジナルの小説が欲しいところ。連載作れとは言わないからさー。
 

Seize the Day (Penguin Classics)

Seize the Day (Penguin Classics)

 
舞台は50年代NY。44歳のトミー・ウィルヘルムは無職(数ヶ月)・貯金無し(父に金を無心したりする)・妻子別居(離婚したいがしてもらえない)の立派なダメ男。なけなしの金を投資信託につぎ込むもののそれさえ騙し取られたりして、何一ついいことはない。何をやってもダメな男の、最悪な一日が(どこまでが本気なのか分からない調子で)ひたひたと描かれる。
そしてこのトミーがとにかく愚痴っぽい。自分がだめになった責任を擦り付けたり弱音をはいたりしながら、資本家を体現する父を欲望の対象かつ仮想敵にしつつ、そこから抜け出そうとする。今なら間違いなくニートだ。この世界は常に動いているし、流れている(金融フロウのように)。それに対して抵抗することの出来なかった彼が最後に見出すのは、ある種の停止の必要性だ。万物が流れる中で自分ひとりが足を止めること。川の真ん中で立ち尽くすことで、その川の流れを肌で実感すること。「この日をつかめ」という(自分をだました相手の)発言に端を発し、ラストシーン、見知らぬ他人の葬儀で体験するある種の崇高さは、そうした流れに還元されない(おそらくは自己の)リアルの体験、のようなものだ。さあみんな、明日から学校や会社に行くのをやめて、取替え不可能な今日という日のリアルをつかむんだ。