Ernest Hemingway, _In Our Times_ and _Men Without Women_

IN OUR TIME Men Without Women

食事の描写の美味しそうな小説が読みたかったのでErnest Hemingway, _In Our Times_と_Men Without Women_を読む。久しぶりに読むとヘミングウェイは何となく可愛い気がする。引用は日本語版(高見浩訳)より。

松の切株を斧で割って何本か薪をこしらえると、彼はそれで火を焚いた。その火の上にグリルを据え、四本の脚をブーツで踏んで地中にめり込ませる。それから、炎の揺れるグリルの上にフライパンをのせた。腹がますますへってきた。豆とスパゲッティが温まってきた。そいつをスプーンでよくかきまぜた。泡が立ってきた。いくつもの小さな泡が、じわじわと浮かび上がってくる。いい匂いがしてきた。トマト・ケチャップの壜をとりだし、パンを四枚切った。小さな泡がどんどん浮きあがってくる。焚き火のそばにすわり込んでフライパンをもちあげると、ニックは中身の半分をブリキの皿にあけた。それはゆっくりと皿に広がった。まだ熱すぎることはわかっている。その上にトマト・ケチャップをすこしかけた。豆とスパゲッティはまだ熱いはずだ。焚き火を見てから、テントを見た。舌を火傷したりして、せっかくの幸福な気分をぶち壊しにしたくない。これまでだって、揚げたバナナを賞味できたためしがないのは、冷めるのが待てないせいだった。彼の舌はとても敏感なのだ。それでも、腹がすごく減っている。真っ暗闇に近い対岸の湿地に、靄がたちこめているのが見えた。もう一度テントを見た。もういいだろう。皿からスプーンいっぱいにしゃくって、口に運んだ。
「やったぁ」ニックは言った。「こいつはすげえや」思わず歓声を上げた。
皿にあけた分をぺろっと食べてしまってから、パンのことを思い出した。二皿目はパンと一緒に食べ、皿をとことんパンですくってピカピカにしてしまった。

Carver読んだときも思ったけど、ミニマルな文体というのは感動的なまでにご飯が美味しそうに映るのです。