たまには日記2(論文と不幸)

長い間取り掛かっていた論文がやっと95%くらい完成。あとは序文をでっち上げるだけ。
手がかかる子ほど可愛いというか、この論文はかなり苦労したので手を離れる感慨もひとしお。内容的には三ヶ月ほど前に完成していたのだけれど、日本語で小説の論文書くのは久しぶりだった(日本語の方が引用がめんどくさいのです)し、体調崩したりプライベートでごたついたりで年末になってから急速にペースダウンしてた。
 
この小説は個人的にすごく好きな小説なのでなかなか思い入れも深い。昔から「いい小説は書き出しがいい」と信じていたこともあるが(今でもそうだ)、この小説の書き出しもなかなか。僕の拙い訳でアレだが、簡単に書き出してみよう。

どこかで、父が僕たちに星座の名前を教えている。僕たち子供は、冷たく暗い裏庭で、硬い十一月の地面に寝そべっている。彼の巨大の身体の上に沢山のハンカチのように自分の身体を預けている。けれど彼は僕たちの重みなど感じていない。父は安物の6Vの懐中電灯の光の束を、僕たちを取り囲む黒いドームの穴へと向ける。凍った地面に横たわる僕たちの前に、冬空の絵入りの教科書が広がっている。6Vの光の束は、この世界でただ一つの弱く暖かい場所を作り出している。

 
出典はないしょ(気になる人はお問い合わせください…て多分ここを読んでる人の半分は知ってるだろうけれど)。数年以内に若島正が翻訳する、かな。きっと。
 
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私事ながら、三日前に中学時代の恩師が亡くなりました。論文と研究計画書の締め切り、そして以前からの友人との約束を控えているので明日の告別式に行くことができないのが心から残念です(よほど友人との約束を断ろうかと思いましたが)。試験などで質問すると「ママに聞いてごらん」などとはぐらかしたり、解答欄を「問一→問二→問四→問五→問六→問三」として気づかなければ途中から容赦なく0点にしたりなど(ひでぇ)、茶目っ気に満ちた好々爺(というには、少なくとも僕の記憶の中では若々しすぎた)でした。これで恩師が亡くなるのは二人目ですが、少しも慣れません。夜空を差す光の束、というには悪戯っぽくて信用しきっていいのかよくわからないような先生でしたが、僕にとって居心地のいい弱く暖かい場所でした。心からご冥福をお祈りします。