「叶えられなかった祈りより、叶えられた祈りのうえにより多くの涙が流される」という、
エピグラフにも掲げられた聖
テレサの言葉を元に
カポーティが書いたセレブ・スキャンダルすっぱ抜き本は、彼の遺作となってしまった。母親に近いくらいの年齢の女性とのセックス、ホモ
セクシュアリティ(ただし殆ど常に受身)、
イノセンスといった
カポーティ節は相変わらず。この
エピグラフをみるとむしろFitzgeraldのTender Is The Nightを思い出してしまう。
カポーティ本人は
アメリカ版『失われたときを求めて』を書きたかったらしいけれど。勿論遺稿なので未完成なのだけれど、第一章「まだ汚れていない怪獣」はかなりの完成度の高さ。
フィッツジェラルドに喩えると、彼女の愛を手に入れることが出来ず緑色の光に手を伸ばすD.TギャッツビーよりもむしろTenderのディックの喪失のほうが深い絶望がある。ある意味でTenderは
イノセンスの喪失の物語だったのだけれど、多分
カポーティがこの小説でやろうとしたこともかなり似たようなことだったんじゃないかな(その時「まだ汚れていない怪獣」というのは殆どmisnomerなんだけれど)。