最近読んだものメモ:

ポール・セロー『ワールズ・エンド』
ワールズ・エンド(世界の果て)
「越境者」を巡る八つ(くらい)の短編集。いまいち言葉にならないその何かが(むりやり)言葉にされるとき、僕はある種の膜のようなものを通過してそれが自分の外に出て、また同じ膜を通って相手に伝わるようなイメージを抱くのだが(エロいな)、そうした「喪失感」は国の外にいると最もよく現れるよね、というお話。どうでもいいがどこか旅行に行きたくなって、こまった。
 
イタロ・カルヴィーノ『むずかしい愛』
むずかしい愛 (岩波文庫)
カルヴィーノ中期の作品、こちらも短編集。タイトルのままなのだが、イタリアの市井の人々(イタリア人じゃない人も入ってるが)の「日常」の中での「異常」の、つまり誰か他の人との関係、何だかうまく名づけることができないから、「愛」と呼ぶしかないもの―「謎」としての身体―の、発見を巡る「冒険」である。こうまとめても少しもカーヴァーっぽくない(やや春樹っぽくはあるが)のは多分カーヴァーほど酒好きじゃないからか。にしてもカルヴィーノは本当に長い間沢山の小説を書き続けて、なによりもそれがえらい。しみじみ。
 
アントン・チェーホフ『かもめ・ワーニャ叔父さん』
かもめ・ワーニャ伯父さん (新潮文庫)
敬遠していた戯曲を少しずつ読み始める。相変わらず登場人物が覚えられなくて困る(特にロシアものは)。にしても「かもめ」の完成度の高さには驚く。