伊吹英子『CSR経営戦略―「社会的責任」で競争力を高める』

CSR経営戦略
溜まっていた本が突然にどれも読み終わり始めました。一冊目は生涯初(多分)のビジネス書、最近気になっているCSR(企業の社会的責任)について。
流行りモノなので、類書は山のようにあったのですが、

・企業戦略にCSRを組み込み、同時にCSRを戦略的に行う
・守りのCSR(一言で言うと企業イメージをさげないためのもの)から攻めのCSRへの転換を提言

という点がどうも違うみたいです。本書はタイトルどおり、CSRが付与する「社会的責任」を市場価値と反発するものでなく両立するものとするため、CSRを社会貢献でなく一種の投資と見るもので、その結果として対象と効果を絞った戦略を立てることを提言しています。
個人的には、企業なんて所詮利益を上げることが目的なものなので、「俺達はこれで社会貢献してるんだ」って偽善者ぶられるよりはよっぽど気持ちいいのですが、それ以上にこうしてCSRを「投資」と見て経営的要請と切り離さないことは、それが不況下でも行われることを意味するため悪くない気がします(単純な社会貢献と見做して経営的要請と切り離すと、今みたいにそれなりに景気が回復してきているときにはみんなやろうとするくせに不況下では見向きもされないものになってしまうしね)。ただ本書は帯にもあるように「経営者」を対象とした本なので(コンサル会社が作ってる本ですし)、どうしたらこうした意識を個々の従業員人に徹底させることが出来るかという点についてはやや弱かった観があります。
とりあえず非常に読みやすく事例も豊富で、変に感傷的じゃない(類書にはそういうのが多かった)という点で本としての質は高かったような気がします。にしてもここにこんなものを書く日が来るとは。