夏雲ではなく夏蜘蛛
リチャード・パワーズ関係の資料を読み返していたら、今年の春にあった村上春樹シンポジウムの基調講演の時のメモが見つかったのだけど、気分転換半分に読んでいるうちに、なんとなく頭の中にスピッツの草野マサムネの声が流れてきて離れない。昔うちの師匠と「パワーズのナルシスティックな男性性はmr.childrenの桜井和寿のそれと似ている」という議論をしたからか、と思ったけれど*1どうも違いそうで、しばらく頭を抱えていたらふっとある女の子の顔が頭に浮かんで合点した。そのシンポジウムで、たまたま数年ぶりに再会した女の子が、無類のスピッツ好きだったのだ。
数年ぶりの再会といってもとくにロマンティックなものはなく、一緒に来ていた連れ(id:shokou5くん)が先に帰ってしまったから軽く立ち話をしただけのことで、今考えたら連絡先も交換していなかった(ぼくは一度携帯電話をなくしてメモリが消去されているし、そうでなくても多分彼女の連絡先は僕の手元にあったものから変わっていただろう)。昔も特に親しかったわけではなく、たまたまお互いに共通の友人がいたから知り合っただけで、ひょっとしたらその数分の立ち話が僕と彼女が交わした一番長い会話だったのかもしれなかった。
だからその時彼女とどんな話をしたかはもう思い出せないし、多分かなりの確率でもう会うことはないと思う。正直なところこうやって書きだすまで、彼女に会ったことさえ忘れていたくらいだ。実は互いの親友と付き合っていたことがあったりして、もしかしたらもっと親しくなれた人だったのかも知れなかったけれど、結局のところ僕が彼女について知っているのは、スピッツの「プール」という歌が好きらしい、ということくらいだった。パソコンのオーディオを立ち上げて「プール」を聞き返しながら、シンポジウムの帰り道、駒場駅のホームで立ち尽くしながら、彼女は何を考えていたんだろうと考えても全く想像もつかない。スピッツのほかにどんな音楽を聴いているのかとか、どんな本を読んでいるのかとか(そもそも僕は彼女が村上春樹を好きだということすら知らなかった)、もっと話しておけばよかった。何だか無性にそう思って、後悔した。*2
2006年、今年も色んな人に会ったけれど、今考えるともっと話しておけば(沢山話を聞いておけば)よかったと心底思う。だからそれでも親しくしてくれた人には、本当に感謝の念に耐えません。ありがとう。明日からは、もっと色んな人を色んなことに巻き込んで遊ぼうと思います。
2007年もよろしくお願いします。よいお年を。
2006/12/31
Lisbon22ことR.M