シカとサバとユリに捧ぐ

二年間フランス語を怠けているうちに、サバはca vaにならず鯖にしかならなくなった。これはまずい、と思ってぼそぼそとつぶやく。サバ、サバ。サバーブ(郊外)、サバティカル(長期休暇)、テニスのサーバー(鯖!)、ワインのサーバー(鯖!)。サバのつく言葉は何だか休日のにおいがする気がした(砂漠、サバイバル、サバンナ、裁きもサバがつくけれど考えないようにしよう)。サ バ。ca va。That go[es]。どこに行くのだろう。caとvaの間にはどんな空間が広がっているのだろう。サとバの間の一瞬の静寂には、あるいはその間の1フォント分のスペースには、何か自由な風が吹いているんだろうか。

Child-Loving: The Erotic Child and Victorian Literature

Child-Loving: The Erotic Child and Victorian Literature

以前読んだErotic Innocenceの分析手法(幼児性愛言説をクィア的に読み替える)のヴィクトリアン版。本としてはこちらが先に来る分、EIに比べて議論がややまとまっていない感じ。技術的な違いとしては、EIに比べて実際の「幼児性愛者」の表象に割とページを割いている点だろうか。個人的にはPeter Panと比較してのAlice in Wonderlandの分析―アリスはウェンディと同じような「大人の世界」の住人で、ワンダーランドの無秩序さに抵抗して意味付けを行おうとする、というのが大意だったような―が興味深かった。無闇やたらに意味へコミットするのって、子供っぽい気がするんだけどな。